僕らの南極

セカペンたちの知っていること、考えてきたことの記録

俺と僕の性別について(後編)

後編の続き。身体の違和感について、家族について、異性について。

 

●身体の違和感について

悠「よく、うなは『俺のないものはヒュンってする』って言うよね」

うな「唐突に何をw まあ、するけど。ゴートシュミレーターの動画見ているときにさ、高いところから落ちて行く映像をみるわけだよ。そのときに、こう、ひゅんって……w」

「ごめん、僕は分からないかなー……。逆に、胸があることに違和感はある。鏡見るのも他人の身体見ているみたいで変に気恥ずかしいんだよな……他人の身体だけど。一応、多重人格の人の話で、女性の身体でも男の人格はペニスがあると信じているという話はあるよ」

「ごめん。俺、さすがにそれがあるとは思わないわ。目には見えないんだし。性別は身体よりも心だから、身体の性の違いっていまいちないんだよね」

「僕らの場合は、そもそも『女の子の身体にのりうつっている』という感覚のほうが強いからね。自分自身というには距離を置いているからこそ、身体の違和感がないのかもしれない。逆に、これがもし一人の人間だったらと考えると、つらいものはある。女子とどのくらい接近していいのかとか。あっちは抱きついたり手をつないだりしてくるけど、こっちはどの程度していいのか分からなくて困るんだよね」

「女子は大変だねー」

 

●家族について

「家族はよく僕のことを息子って言うね。普段、母親とか父親と接するのが僕だからっていうのがあるんだろうけど」

「俺の頃からわりとそうだったよな。むしろ、俺がいなかった頃の幼稚園とかどうしてたんだろう。女の子として扱ってたのかどうか……」

「だけど、完全に男の扱いもしていないんだよね。なんというか、僕を息子扱いするのは、『完全に女らしい存在』になってほしくないんだろうと思うんだ。母さんの思う女っていうのは、男に従属していて、自分では何もできなくて、仕えるしかない存在に近いんだと思う。その理想を子どもである僕らに押し付けているにすぎないってことだ。『男と対等な女になれ』って言いたいんだろうけど」

「まあ、親は子どもを成功品にするのに必死だからね。人並みにいてほしいけど、人より優れてほしいってわけのわからないことを思うから。性別に関しては『僕は男として生きます!』なんて言ったら、下手すりゃ勘当だろうよ」

「目に見えてるね。『女の子と付き合います』とか『性転換します』とか言っても勘当だろうね。そのへん、結果に関しては父親が厳しいけど、過程に関しては母親が厳しい傾向にあると、僕は思うんだ。そして、その理由は、子どもがどうしてそうなったのかという過程は母親に責任があるという伝統からきているかもしれない。よく言うだろ、『おまえの教育が悪い』って。だから、身体と違う性を持っている子がまず打ち砕かれるのは、母の言葉だと思う」

「今の時代はどうなんだろうな。男親にも教育の責任があるように考えられてきたら、男親すらも厳しくなるかもしれないな」

「これから先、どうなるか分からないけどね……。厳しく叱ったって違うものは違うんだからってことを知ってほしいかな。矯正してどうにかなるものではないから」

 

●異性について

「俺はめっちゃ女の子好き」

「知ってる。おまえが女好きなのも、女の子に手がはやいのも知ってる」

「逆に、悠は男が好きなんだよな。みんなでしんがり思索隊 夢見る頃のこと / 著者:セカペン - ch4の十六のときに自分で書いていたじゃないか」

「それはそうだけど……、=男子が好きっていうわけでもない。僕は『その人が好き』っていうものであって、『その人が男だから好き』っていうものではない。つまり、性に惚れるんじゃなくて、人間性に惚れるんだ。僕みたいな人以外の場合は、その前提として異性であることがあるんだろうけど、僕にはその前提がないというだけだ」

「なるほどね。俺にはよく分からないけど。俺と悠の違いって、はっきりと男性であるという意識があるかないかだろ? おまえは、なんというか、自分の性別に関して自由だ。男でもあり、女でもあるみたいな両性だ。そんなおまえだから、バイみたいな考えできるんだろうよ」

「バイみたい……。そう言われればそうなんだけど、でも、僕は未だに女の子にそこまで惚れたことないんだよね……」

「あれか。『女の身体だけど、心は男でホモである』ってか。……おまえ、本当に男か?」

「一応、僕は自分の性については男だと思っているよ。それに、女性に関して惚れることができないのは、昔、女子に強姦みたいなものをされたせいだとも思うし。その思い出を払拭すれば、ちゃんと女の子も好きになれるはず」

「俺はさっきも言ったように女好きだけどさ、俺が一人の人間だった場合、その女の子をちゃんと大事にできるかっていうのは保証できないな。つい、いじめてしまって泣かせそうだし。だからこそ、今みたいな風に女の子を愛でながらも手をだせない状況がありがたかったりもする」

「僕が一人の人間だったら……女の子を好きになったり男の子を好きになったり急がしそうだ。特にありそうなのが、僕のことを好きと言う人は男子であっても女子であっても受け入れてしまいそう。変に恋愛感情が薄い分、どうしてもね……」

 

●改めて<性別>についての話

「俺に関してはともかく、おまえに関しては事情を知っていても女子扱いをする人は多いだろう。優しいし、飯やらお菓子やら作るしで女子力ありすぎ」

「男にだって女子力ある人いるじゃん。だけど、僕は自分は女だってことを意識すると、途端に違和感がでるんだ。何度か意識してみたことはあるんだけど、やっぱり駄目で。上手く言えないんだけど、女子でいる自分が気持ち悪くて、『なんか違う!』って思ってしまうんだ」

「女子でいるってことはめんどくさいもんな。俺は小学校と大学生の今くらいしか経験していないけど、そっちは中学と高校も経験しているわけだし。一番めんどくさいのって、やっぱ女子のいざこざ? それとも女子でいなきゃいけないこと?」

「僕が女子であることで一番めんどくさいなと思うのは、「自分の心が男なのに、女の身体をしている」ということよりも、「心が男であるが故に、だいたいのことについて嘘をつかなきゃいけない」ということかもしれない。 例えば、水泳の授業のときに女子は男子の上半身を見るわけだよ。それで誰が筋肉質だとか、誰がかっこいいって話に花を咲かせるわけだよ。そういうときに僕に話題をふってくる。んで、僕は本心では『いや、男の裸見ても面白くはない』と思いながらも、『〜の身体っていいよね!』とか『かっこいいよねー』と言わなきゃいけないんだよ。この浮く/浮かないの感覚が一番めんどくさい」

「んなもん、気にしなきゃいいじゃん」

「塾とかでは全く気にしなかったけど、学校ではそうはいかないんだ。学校は一種の団体行動で、女子は女子のコミュニティを上手く形成しなきゃいけないし、クラスの女子とは誰であっても話せるくらいでないと不便だ。自分と違うカラーの女子と班を組まなきゃいけなくなったときに、その女子が僕の言う事を聞いてくれるどころか、僕をおもちゃにすることがあるくらいだからな」

「それに比べて、今はすっげー自由だな」

「大学も個人プレイだからね。世界が広くなれば、そういう性別も自由になるということさ。自分の問題になるからね」

●最後に

 前編には書きませんでしたが、僕とうなは性同一性障害という括りに入る人間ではありません。多重人格の一人格としてお話をしたまでです。しかし、性別に関するこういった話はどこかの誰かに通ずるものになるかもしれないと思い、うなとあーだこーだ話してみました。

 今回はざっと話したことをまとめて見ましたが、他にもなにかあればコメントかTwitterで言っていただければ、うなと一緒にコメントします。

 性別が自由になるという現代の風潮がいいものであるかどうかは僕らには分かりません。しかし、自分が自分であることを隠さなければいけないという点ではすごく苦しいものだと思います。暇な時にでも、自分の性別、周りの人の性別、どこかにいる誰かの性別について考えてみてください。

 読んでくださってありがとうございます。